「福美人 大吟醸 精米歩合40%」
西条の酒蔵のなかで、私にとって福美人は「飛び道具」です。
もちろん賞賛の意をこめて。
いままで飲んだ福美人の銘柄はどれもフックが効いていて、「あ〜福美人だ」と気持ちよくやられてしまうのです。
このお酒もそう。
最初は「甘い!」の一言。食後のデザートかと思うほどの甘み。
でも、段々と時間がたつうちに甘みが消えていくのです。
日本酒ならではのえぐみというか渋みというか、好ましい荒々しさが立ち上がってきます。
最初の一口の「スイーツ」な印象から大きくかけ離れた男前な表情に引っ張られて、おちょこ三杯目には、「よっしゃ、リセット。ここから本腰いれて飲み始め」と、ビシッと向き合う気分になるお酒です。
さて。
私はバーボンのターキーが大好きで、大昔に通っていたバーでは毎回「ターキー8年ダブルでロック」を飲んでいました。
なんとなく常連っぽく扱っていただけるようになった頃、マスターから「味が変わるんですよ、ぜひ飲んでください、ごちそうしますから」とお味見させていただいたのが「ターキー12年」。
この文章を書いているときにググってみたら12年は販売終了のようで、現在は13年が販売されているとのこと。
はああ、いつの間に……。思い出のターキー12年が消えるなんて……。
なんとも隔世の感があります、年をとるわけだわ。
とりあえず、ターキー13年、そのうちチャレンジしなくては。
閑話休題。
8年に比べてちょっと高いんですよね、ターキー12年。
ターキーライは飲んだことあったのですが、12年に手を出したことはありませんでした。
マスター一押しの12年をロックでいただいたのですが、最初の一口は「普通の8年もののターキー」。
まったくちがいがワカラン。
それが、二口目、三口目と、時間がたち、氷がとけ、グラスの琥珀が淡く落ち着く頃、がらりと甘くまろやかなお酒に変わったのでした。
そう、本当に唐突に。
バーボンの荒々しさ。舌先、そして喉元から胃袋にかけて、その通過点が焼けるようにヒリヒリするあの刺激が好きなのですが、12年はバーボンらしい荒々しさと、突然出現するまろやかな甘さの両方が楽しめました。
そんなターキー12年ものの味の変化を思い出した、「福美人 大吟醸 精米歩合40%」でした。
「大吟醸」の文言から想起される「上品できれいにまとまった味」のつもりで呑むと、気持ちいいほどに裏切ってくれるお酒です。